鎌倉市「子ども条例」が本会議で可決されました。

3月12日の本会議において「子どもがのびのびと自分らしく育つまち鎌倉条例」が採決が行われ、賛成多数により可決されました。

以下、反対討論の内容についてです。

 

本条例は、当初は「子ども総合支援条例」という仮称でしたが、途中から「子どもがのびのびと自分らしく育つまち鎌倉条例」という名前に変わりました。条例名から「支援」という言葉がなくなりましたが、内容的に子どもを支援するための基本理念、大人社会の責務や役割、施策を定めたものであることに変わりはありません。

策定過程で寄せられた意見を取りいれて、国連子どもの権利条約との関係が書き込まれてはいます。しかし、条例案と一緒に示された逐条解説の「前文」についての部分は、要約すると「子どもの権利条約の精神にのっとり、地域社会が子どもを権利の主体として尊重し、子どもの育ちを支援する」というものです。子どもの権利は、大人が守ればよいというものではなく、子ども自身が、自分の持つ権利を知り、自ら行使できるようにならなくてはいけません。その視点がスッポリと抜け落ちているのではないでしょうか。「あぁ、子ども達にとって本当に良い条例ができた」とはどうしても思えない理由はそこにあります。

前文の逐条解説では、子どもの権利条約が掲げている大きな4つの権利、「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」をあげて、子どもをこれらの権利を持つ一人の人間として尊重する、と述べられています。子どもを権利の主体として尊重するならば、これら4つの権利を逐条解説で紹介してお茶を濁すのではなく、前文および関係する条文の中にきちんと盛り込むべきです。これまで繰り返し指摘してきたことですが、子どもたちを支援の対象として見るのと、権利の主体として見るのでは、根底にある子ども観が大きく異なります。この条例案では、子どもたちは支援を受ける対象であり、受け身の立場でしかありません。

1月31日に開かれた教育こどもみらい常任委員会では、昨年11月に行ったパブリックコメントの報告を受けました。全体で76件寄せられた意見の中の68件が条例の内容についてでしたが、そのうちの17件が、「子どもが権利の主体であることを認識したうえでの支援であるべきだ」「子どもの権利保障を明確に定める必要があるのではないか」など、子どもの権利についての意見でした。市民意見を真剣に受け止めたなら条文に反映させるべきではなかったでしょうか。

また、「子どもの最善の利益」の位置づけにも違和感があります。「子どもの最善の利益」は、子どもの権利条約を貫いている大切な原則の1つで、日本ユニセフ協会は、これを「子どもに関係のあることを行うときには、子どもにもっともよいことは何かを第一に考えなければなりません」と子ども向けに訳しています。
条例案では、基本理念に「子どもが、心身の健やかな成長を妨げられることがないよう、子どもの最善の利益が追求され、児童虐待を受けることがなく、安心して生きていくことができる環境が整えられること」とあり、次に出てくるのが、第5条の(保護者の役割等)のところです。保護者は児童の養育及び発達について、責任を有しているからこそ、常に子どもたちの最善の利益を考え、日々生活をしています。その役割を果たせないのであれば、何らかの悩みを抱え込み、誰にも相談出来ずひとりで苦しみ、頭では分かっていても行動が伴わないということが考えられます。いずれにせよ、保護者の役割等のところにだけ子どもの最善利益について書き加えるのは著しくバランスに欠け、条文第4条(市の責務)や第7条の(育ち学ぶ施設の関係者の役割)にこそ加えるべきです。例えば、長谷こども会館・岩瀬子ども会館・玉縄青少年会館の閉館が決まる中で、各地で小さい子ども達の地域の居場所が狭まっています。子育て家庭にとっては危機的な状況です。行政が、子どもに関わる公共施設のあり方を考える時にこそ、「子どもの最善の利益」が問われるのです。第18条(子どもの居場所の確保)にも当然関係します。

また、第17条(子どもが意見を言える機会)の逐条解説には、「子どもの自由な意見には困りごとも含む」と付け加えられましたが、条文の方にはなく、当初案から削られたままです。子どもが「自らの夢を気軽に語る」のはすばらしいことだと思いますが、困難な状況にある子どもへの視点が抜け落ちています。総合的な支援ということを目指すのであれば、困難を抱えた子どもが「困っています」と安心して言えるようにすることを条文明記するべきです。

子どもへの意見聴取については、既に委員会でも意見を述べましたが、意見聴取の対象を広げるべきでした。小中高生への意見聴取は、対象者は大人たちの判断で決定されており、校長会の中で決められた協力校の一部の子どもの意見のみです。先駆けとも言える条例を作った川崎市、札幌市では、子ども委員会を作って子ども達自身に議論をかさねてもらい、条例制定過程での子どもたちの参加を徹底して図りました。鎌倉市でも一旦立ち止まり、子ども達の参加の仕組みを作って条例案を練り直してはどうでしょうか。子ども達の参加を広げることで、多くの子ども達が、この条例は自分たちの条例なのだと思えるようになるでしょう。とても大事なことだと思います。

以上、「子どもを権利の主体とみて、その権利保障を条文に書き込むべきであること」「子どもの最善の利益を常に考えるのは地域社会の子どもに関わるすべての大人であること」「子どもの意見表明権」「条例策定過程での子どもの参加」といった視点で、条例案を作り直す必要があることを述べました。
既に2018年9月議会で会派の議員が指摘しているとおり、本市の条例案は、兵庫県明石市のこども総合支援条例をかなりの部分参考にしています。川崎市、札幌市、松本市、近いところでは2015年に施行した県内の相模原市など、優れた子ども権利条例は多々あるのに、なぜ参考にしなかったのでしょうか。札幌市の条例が目指すのは「自立した社会性のある大人への成長」であり、「子どもの視点に立ったまちづくり」であり、「権利侵害からの救済」です。子ども条例を作るのであれば、このような踏み込んだ内容のものにすべきであると申し上げて討論を終わります。